副鼻腔炎
acute otitis media
副鼻腔炎
acute otitis media
副鼻腔炎(蓄膿症)は、注意力散漫、嗅覚障害などを引き起こす日常生活に大きな影響を与える病気です。症状に心当たりがある方は、早めに耳鼻咽喉科で治療を始めましょう。
目次
鼻の副鼻腔(ふくびくう)という場所に炎症が起きることにより、主に鼻閉(びへい:鼻づまり)、鼻漏(びろう:鼻水)、後鼻漏(こうびろう:喉のほうへ流れる鼻)といった呼吸器関連の症状を引き起こす病気です。その他、頭痛や頬部痛(頬の辺りの痛み)、嗅覚障害など日常生活を大きく阻害する症状を伴い、仕事や勉強に集中できない原因となります。
副鼻腔に細菌やウィルスが感染し、膿が貯まることから、蓄膿症とも呼ばれています。
こんな症状があてはまります
副鼻腔炎は、症状が1ヶ月以内に治まるものを急性鼻副鼻腔炎、3ヶ月以上長引くものを慢性副鼻腔炎と区別して呼んでいます。急性の場合は、殆どの場合で急性鼻炎を伴うため、急性「鼻」副鼻腔炎と呼ばれます。
繊毛運搬機能の低下
先天性あるいは細菌感染により繊毛運搬機能が低下することで、膿が排泄されにくくなります。
粘膜の肥大化
粘膜の腫れや鼻茸により、副鼻腔が狭くなることで、膿が排泄されにくくなります。
骨格の形態不良
成長期の過程で、鼻の骨や軟骨が曲がってしまう(鼻中隔湾曲症)ことがあり、空気の通り道が隙間が狭くなってしまうことで、膿が排出されにくくなります。また湾曲が大きく症状がひどい場合は、外科的手術が必要となります。
発症原因による分類
発症した原因により歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)、副鼻腔真菌症(ふくびくうしんきんしょう)、乾酪性上顎洞炎(かんらくせいじょうがくどうえん)などに分けられます。
歯性上顎洞炎
上顎洞は上顎の歯根と非常に近い位置にあるため、虫歯や歯周病を治療しないで放置していると、上顎の細菌による炎症が上顎洞にまで移り、歯性上顎洞炎という副鼻腔炎になることがあります。急性の場合は、臭い膿のする鼻汁や頬部痛に加え、歯の痛みも起こります。耳鼻科の副鼻腔炎治療とともに、歯科で虫歯や歯周病の治療を行う必要があります。
副鼻腔真菌症
副鼻腔に真菌(カビ)が生じ、強い炎症が発生する病気です。普通、健康な方に起こることはまれですが、身体の抵抗力が落ちていたり、抗生物質やステロイドを使用していることで免疫力が弱っていると起こることがあります。糖尿病や悪性腫瘍歴のある方も起こる場合があります。症状としては、片方の鼻から悪臭のする膿を含んだ鼻汁が出て、時には乾酪性のチーズのような膿が出る(乾酪性上顎洞炎)こともあります。
副鼻腔炎かどうかを判断するためには、次の4つの方法から総合的に診断します。
自覚症状から診断
鼻閉(びへい:鼻づまり)、鼻漏(びろう:鼻水)、後鼻漏(こうびろう:喉の方へ流れる鼻水)、頬部痛、頭痛、痰が絡む咳 などの症状から、副鼻腔炎と診断します。
鼻の所見から診断
鼻鏡や内視鏡で鼻腔(びくう:鼻の奥の空洞)を直接目で見て、膿性鼻汁(のうせいびじゅう:膿を含んだ鼻水)があるかどうかを確認します。
画像検査から診断
上顎洞に陰影
直接目で見えない空洞にある膿性鼻汁を、レントゲンやCTなどの画像診断で確認します。膿性鼻汁が存在する箇所は、白い陰影がが確認できます。
当院ではレントゲンで確認して、副鼻腔炎以外の合併症(歯性上顎洞炎の場合の歯周病など)も疑われる場合には、CT検査をするため他院を紹介します。
細菌検査から診断
副鼻腔炎の原因となったと思われる細菌を鼻から綿棒で直接採取して確認します。副鼻腔炎の原因となる細菌は、副鼻腔炎特有の細菌ではなく、肺炎球菌(はいえんきゅうきん)やインフルエンザ菌、ブドウ球菌といった、一般的な風邪の原因となる細菌です。
副鼻腔炎を治療する取り組みは、副鼻腔炎に感染した菌を殺菌すること、感染による炎症を抑えること、溜まった膿を排出させること、空気の通り道を確保し換気することの4通りです。
これらの治療方針を念頭に置き、症状と鼻の形状に併せて、薬物を中心に症状を少しずつ改善していく保存的療法と、症状がひどい場合に適用される手術療法を選択します。
菌を殺すために抗生剤、炎症を抑えるためにステロイド、症状によって抗アレルギー剤などを処方します。また、膿の排出を活発にするため繊毛運動を正常化させる粘液溶解剤を一緒に処方する場合もあります。
抗生剤、ステロイド、粘液溶解剤などの薬液を霧状にして噴霧します。鼻に機械を当てている3分間は、鼻から息を吸い、口から吐いて下さい。こうすることで薬液が鼻の中に行き渡ります。即効性が高く、安全性の高い治療法ではありますが、一度やれば治るという治療法ではないため、ある程度継続して通院していただく必要があります。
ヒトの粘膜と同じ浸透圧に保った生理食塩水で直接鼻を洗浄する方法です。鼻腔洗浄も効果が永続するものではないため、定期的に実施する必要があります。自宅で行う方法を推奨している雑誌等を見かけますが、水道水で行うと逆に粘膜を痛めてしまう場合がありますので、近医の耳鼻咽喉科で行うことをお勧めしています。
症状がひどく薬剤を長期投与しても症状が改善しない場合や鼻中隔湾曲症のように鼻の形状に異常があり、膿が排出されにくい場合は手術療法を選択することになります。
冬の代表的な耳鼻科疾患である副鼻腔炎は、子供にも起こりうる病気です。
多感な子供の成長を阻害する副鼻腔炎は早期に治療すべき疾患です。
しかし、子供には強い薬を使うことができないため、治療に忍耐を必要とする場合もあります。
一般に15歳以下の小児に発症する副鼻腔炎を小児の副鼻腔炎と呼び、成人の副鼻腔炎と区別して治療を行います。小児の副鼻腔炎は発症頻度が低くないにもかかわらず、一般的にあまり知られてないため、慢性化してしまってから来院される場合が多い病気です。子供の場合、多少鼻がつまっていても自覚症状を訴えないことが多く、親御さんが症状に気付くのが遅れるということも慢性化に繋がっている原因です。
しかしながら、副鼻腔炎にかかると日常的に鼻閉が続くため、注意力散漫や情緒不安定になり、学習能力や運動能力に大きな影響を与えます。また、睡眠障害や嗅覚障害の原因にもなります。「うちの子はずっとぼーっとしていて、大丈夫かしら?」と思い始めたら、まずは耳鼻科で検査してみることをお勧めします。
小児の副鼻腔炎はウイルス感染が発端となり、細菌感染に移行すると考えられています。
その原因となっている菌は、上顎洞に貯まった液から検証するとインフルエンザ菌と肺炎球菌の二種類がほとんどです。
小児では具体的な症状の訴えがなく、また副鼻腔の発達が未熟なため単純X線写真による確認がとりにくいこと、副鼻腔CT撮影には幼少児の場合鎮静が必要であることなどから、小児では画像診断が難しく、耳鼻咽喉科医の問診や視診に因るところが大きいと考えます。
耳鼻咽喉科に受診する乳幼児の患者さんの受診動機の多くは、長引く鼻水、鼻づまりです。
特に近年子供の副鼻腔炎は、アレルギー性鼻炎の関与や月齢の低い時期からの保育園などでの集団生活の影響があります。鼻症状が長引くと中耳炎を合併したり、集中力の低下を招いたりします。また、湿性咳(痰の絡む咳)も副鼻腔炎の重要な症状です。その他頭痛、顔面痛、鼻出血、発熱などがみられることもあります。
小児の副鼻腔炎の治療
急性副鼻腔炎の場合第一選択薬はペニシリン系抗生剤です。
肺炎球菌の耐性菌の感染が疑われる症例には、初回から高容量・短期間の投与が臨床効果や細菌学的効果、コスト面からも推奨されます。しかし、何れにしましてもできるだけ抗生剤投与は控えないといけませんので子供の副鼻腔炎の治療は内服薬以外に、ネブライザー治療、鼻処置が重要です。薬に頼るだけではなく、こまめに耳鼻科に通い、鼻汁を吸引する・鼻をかませる習慣をつける・鼻を洗浄するなどの行為が大切です。
また、臨床経過から判断して、発症から三ヶ月以上経過し慢性化した症例の場合、自然治癒は困難で、マクロライド系抗生剤を体重当たり5~8mg/kg/日(通常量の約半量)を、2ヶ月以上投与するマクロライド療法は3歳以上の小児の慢性副鼻腔炎症例の65%に治癒が認められたという報告があります。(The Japanese journal of antibiotics vol.58 suppl.A. 飯野 ゆき子)
小さなお子さんの場合、粘稠な鼻水が鼻の奥で溜まっている事がよくあります。粘稠な鼻水は外に出るよりそのまま口の中に出てきます。また小児の場合鼻づまりに対して鈍感であるため、お母さんが気づかないのです。鼻の症状がないと思っていても最近いびき(寝息)が大きい・よく耳を触る・口臭が気になる・痰の絡んだ咳が長引くなどの症状があれば早めに耳鼻科受診をして下さい。
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