
たんがからむ
たんがからむ
「痰(たん)がからんで喉がすっきりしない」「咳をしても痰が切れない」——このような症状は多くの方が経験するものです。痰は、気道や肺が異物から身を守るために分泌する粘液と、そこに混じった老廃物や細菌、ウイルスなどから成り立っています。健康な状態でも一定量の粘液が分泌されていますが、炎症や感染、アレルギーなどの影響でその量や性質が変わると、不快な「からむ痰」として自覚されるようになります。
痰がからむ状態が長く続くと、声がかすれたり、咳が止まらなくなったり、喉や胸の不快感に悩まされることもあります。また、単なる風邪と自己判断して放置すると、慢性副鼻腔炎(ちくのう症)や気管支炎などの病気が隠れていた、というケースもあるため、早めの受診が重要です。
痰がからむ原因は多岐にわたりますが、代表的なものを以下に挙げて説明します。
もっとも一般的な原因は、ウイルスや細菌による上気道感染です。風邪やインフルエンザなどにかかると、体は異物を排除しようとして粘液の分泌量を増やします。その結果、痰が増えて喉にからむ状態になります。
副鼻腔や鼻腔に溜まった鼻水が、喉の奥に流れ込む状態を「後鼻漏」といいます。この鼻水は粘り気が強いため、喉の奥に常に痰が残っているような不快感を引き起こします。アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎などでよく見られる原因です。
アレルギー反応によって気道に炎症が起こると、気道粘膜が刺激されて痰の分泌が増加します。花粉症やハウスダストアレルギーなど、原因は多様です。
副鼻腔に炎症が長期的に起こることで膿性の痰が喉に流れ込み、常に痰がからんだ状態になります。匂いがわからない、鼻詰まりが続くなどの症状を伴うことも多く、治療には時間がかかるケースがあります。
たばこの煙やPM2.5などの汚染物質は気道の粘膜を傷つけ、痰の分泌を促進します。慢性的な痰がある方で喫煙歴がある場合、慢性気管支炎やCOPDのリスクも考慮すべきです。
胃酸や消化液が食道を逆流し、咽頭や喉頭を刺激することで痰が絡む場合もあります。特に朝方や食後に症状が強く出ることがあり、胸やけやげっぷを伴う場合はこの疾患が疑われます。
痰がからむときには、以下のような症状が現れやすくなります。
これらの症状が2週間以上続く場合、耳鼻科での診察をおすすめします。
喉の不快感
常に何かが引っかかっているような異物感があり、咳払いや咳で除去しようとします。
痰(たん)が続く
痰を出そうとして咳が止まらなくなることがあります。乾いた咳とは異なり、「ゴロゴロ」「ネバネバ」とした音が特徴的です。
声のかすれ
痰が声帯に付着すると、発声がうまくいかず声がかすれることがあります。
口臭
後鼻漏や副鼻腔炎が原因の場合、痰に雑菌が混じるため口臭が強くなることがあります。
喉の痛み
痰の排出がうまくいかず、咽頭や喉頭が炎症を起こすこともあります。
耳鼻咽喉科では、痰がからむ症状の原因を正確に見極めるために、以下のような検査を行います。
問診・視診
まずは、症状の経過、痰の性状(色・量・におい)、同時に現れている症状(咳、鼻水、鼻詰まりなど)について詳しく伺います。その後、口腔や咽頭の状態をライトで観察します。後鼻漏が疑われる場合は、鼻腔の奥や喉の奥の粘液の状態を確認します。
鼻内視鏡検査
細い内視鏡を鼻から挿入し、鼻腔や副鼻腔の状態を直接観察します。膿性の分泌物があるか、粘膜の腫れやポリープの有無などを調べることで、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などの診断に役立ちます。映像を患者さんと一緒に確認することもでき、治療への理解が深まります。
喉頭ファイバースコピー
喉の奥や声帯付近に痰がたまっている場合、内視鏡を用いて咽頭・喉頭の状態を観察します。声帯の動きや粘液の付着、腫れなどを直接見ることで、声のかすれや咽頭炎の原因を明らかにします。
痰の培養検査
採取した痰を培養し、細菌やウイルスの有無を調べることで感染の有無や原因菌を特定します。緑色や黄色の痰が出る場合には、細菌感染の可能性が高いため、抗菌薬の選定にも役立ちます。
アレルギー検査
アレルギーが疑われる場合は、血液検査や皮膚テストなどを行い、アレルゲン(アレルギーの原因物質)を特定します。花粉やダニ、動物の毛など、原因に応じて治療方針を決定します。
胸部レントゲン検査
痰が続く場合、気管支炎や肺炎、肺結核などの下気道疾患が隠れていることもあります。必要に応じて胸部X線撮影を行い、肺の状態を確認します。
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