
耳の腫れについて
耳の腫れについて
「耳が赤く腫れて痛い」「耳たぶがふくらんで触れると熱を持っている」——このような耳の腫れに関する症状は、日常的に誰にでも起こりうるものです。耳は皮膚、軟骨、血管、リンパなど様々な組織から構成されており、そのいずれかに炎症や感染、外傷が起きることで「腫れ」という形で症状が現れます。
耳の腫れは外耳(耳たぶ・外耳道)に起こるものが多く、外傷やピアス、細菌感染などが主な原因です。しかし、まれに中耳や内耳、耳下腺、リンパ節など耳周辺の構造にも関わる病気が背景にある場合があるため、症状を軽視せず、耳鼻咽喉科での診察が推奨されます。
早期対応により、症状の悪化を防ぎ、再発のリスクも減らすことができます。耳の異変に気づいたら、まずは専門医の診察を受けましょう。
耳の腫れはさまざまな要因によって引き起こされます。以下に代表的な原因を紹介します。
耳の穴から鼓膜の手前までの「外耳道」に炎症が起こる病気です。耳かきのしすぎ、水泳後の耳の湿気、傷口からの細菌感染が主な原因です。痛みやかゆみを伴い、外耳が赤く腫れることがあります。
耳介(耳の外側の部分)にある軟骨が炎症を起こす状態で、ピアスや打撲、虫刺されが引き金になります。赤く熱を持ち、皮膚が腫れ上がるのが特徴です。進行すると膿がたまり、耳の変形をきたすこともあります。
耳の下にある唾液腺「耳下腺」がウイルスや細菌で腫れる病気です。おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)が代表的で、耳の前後や下にかけての腫れが目立ちます。発熱やだるさを伴う場合は早期受診が必要です。
耳の後ろや下にあるリンパ節が風邪や炎症に反応して腫れることがあります。痛みを伴うことが多く、耳の腫れと混同されがちですが、触れるとしこりのように感じられます。
耳をぶつけたり、虫に刺されたりしたことで局所的な炎症が起こり、腫れが生じることがあります。症状は一時的なことが多いですが、細菌が入り込むと化膿する恐れがあります。
皮膚が敏感な方やアレルギー体質の方では、イヤリングやヘッドフォン、シャンプーなどが刺激となって、耳が赤く腫れる場合があります。慢性的に繰り返すこともあるため、皮膚科との連携が重要です。
耳の腫れに関連する症状は、原因によってさまざまですが、以下のような共通した特徴があります。
特にピアスの穴の周囲や耳の裏側が膨らんでいる場合、局所感染や炎症が疑われます。
炎症が進行すると、じっとしていても痛むようになります。
これらの症状が複数組み合わさって現れることもあります。腫れだけでなく、痛みや発熱、難聴などが伴う場合は、より深刻な状態が疑われるため、早めの受診が必要です。
耳鼻咽喉科では、耳の腫れの原因を正確に特定するために、視診だけでなく、いくつかの専門的な検査を行います。耳の腫れは見た目だけでは判断が難しいこともあり、症状に応じて検査の種類や範囲を調整する必要があります。以下は、耳の腫れに対してよく行われる主な検査方法です。
まず行われるのが視診と触診です。視診では、耳介(耳の外側)や耳たぶ、耳の後ろの皮膚の状態、赤み、腫れの範囲、皮膚の硬さなどを観察します。炎症が起きている部位を特定するうえで重要です。
触診では、耳やその周囲を軽く押したり触れたりして、痛みの有無やしこりの硬さ、熱感の有無を確認します。耳の腫れがリンパ節由来か皮膚の炎症かを見分ける判断材料になります。
耳の穴の中(外耳道)から鼓膜の状態を確認するために、耳鏡を使った検査を行います。これにより、外耳炎が起きていないか、鼓膜の腫れや発赤、耳だれの有無などを詳細に観察できます。耳の奥に異常がある場合には、外からは見えない症状が確認できるため、初期診断として非常に重要です。
より精密な診察を行う場合には、耳専用の診察用顕微鏡を用いて観察することもあります。微細な傷や膿のたまり具合、外耳道や鼓膜の微小な変化を正確に確認できます。
耳の下や顎の周囲、耳の後ろにしこりや腫れがある場合、エコー(超音波検査)を行うことで、内部の腫瘍、膿瘍、リンパ節の腫れなどを確認します。痛みのない非侵襲的な検査であり、特に耳下腺炎やリンパ節炎が疑われる場合に有効です。
超音波検査は小児や高齢者にも安心して行える検査であり、腫瘍と炎症の鑑別にも役立ちます。
耳から膿や分泌物が出ている場合は、綿棒などで採取して細菌培養検査を行います。これにより、感染の原因となる細菌の種類を特定し、それに効果的な抗生物質を選ぶことができます。
特に外耳炎や耳介軟骨膜炎では、抗菌薬の選択ミスによって治りにくくなることがあるため、正確な細菌同定が治療の鍵となります。
発熱や全身倦怠感を伴う場合は、血液検査を行って体内の炎症反応や白血球数、CRP(炎症マーカー)の値を確認します。ウイルス感染(例:おたふくかぜ)や細菌感染の程度、全身的な炎症の広がりを把握するための重要な情報源です。
血液検査によって、耳の腫れが局所的なものか全身性の病気に関連するものかを判断することもできます。
繰り返す耳の腫れや湿疹を伴う場合、接触性皮膚炎やアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患が関係していることがあります。その際にはアレルギー検査を併用して、特定の金属(ピアス)、洗髪剤、化粧品などに対するアレルギーの有無を確認します。
耳の腫れが長期にわたって治らない、または耳介周囲の骨・深部組織への浸潤が疑われる場合は、画像検査が必要となることがあります。CT検査では骨や中耳の構造を、MRIでは軟部組織の状態を精密に確認できます。重度の中耳炎や腫瘍性病変との鑑別に役立ちます。
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